【束縛―ソ・ク・バ・ク―】
【4月】
彼女が今年度の人事異動でこの支社に来た。
そして僕の席の隣に。

あの《川村多恵子》が。

多恵子は本社で男勝りの営業をこなすスーパーウーマン。
大きな契約をいくつも成功させたという彼女を知らない者は
この会社にはいないだろう。

しかし、この支社への移動は多恵子の強い希望らしい。
本社の営業課は、泣く泣く彼女を手放したらしいと聞いた。

なぜだろう・・。



この支社は本社と違って、営業も内勤も自分でこなす。
相手先の約束、資料データ作成・整理、その他の雑用すべて。

そして僕は知った。

多恵子はパソコンが全くできないことを!



パソコンは2人で1台。
左の席に僕、右の席に多恵子、そして真ん中にパソコンが置いてある。

支社長の
「篠原君、川村君の面倒見てあげてね。」
の言葉に、パソコン指導から入った。


正直そんな時間の余裕など無いところに余計な仕事も増えて、
僕は毎日帰宅が深夜になった。
もちろん多恵子も深夜になる。

僕の根気はいつまで持つか。

あの、うわさに高い営業のスーパーウーマン多恵子のパソコンに
今夜も付き合う・・・。
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