【束縛―ソ・ク・バ・ク―】
僕が帰宅して30分後、携帯が鳴った。
多恵子からだった。

「川村です。」

「篠原です。どうした?」

「私、篠原さんの声が聞きたくて・・・。
 篠原さんの声が好きなんです。
 パソコン教えていただいてて、隣で響く声がすきなんです。
 電話の声も素敵でした。
 思い切って電話番号聞いてよかったです。
 ありがとうございました。
 おやすみなさい。」

「・・・せっかくだから、五分くらい話そうよ。」

 その後30分くらいは話して電話を切った。



多恵子がなぜこの支社を希望したのか。
本社の営業体制に疲れたらしい。
周りはほとんどが男性。
しかもプライドが高く、仲間というよりライバルという意識。
女だから~、女のくせに~と言われ続け、
ま、心が病気になりそうだったという事だった。

だから僕のように時間をかけてパソコンを教えてくれる人は
驚いたし嬉しいと。



もっとも、本社では資料データは自分で作成しなくても、
それ専門の女性に頼むらしいが、男性社員には親切で
彼女には意地悪する人もいたらしい。

また、彼女が今年の3月で28歳になった事も知った。

僕が今年31歳になると言ったら、もっと年上かと思い驚いたと言った。

「老けてる?」って聞いたら、大人の男の色気を感じると、
嬉しい事を言ってくれた・・・。
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