【束縛―ソ・ク・バ・ク―】
髪は額を出すように分け形よくまとめている。
顔はアイライン1本でこんなにも変わるのかと思うほど目を引き立たせ
、口紅もローズの濃い色。

服も胸元の開いた黒のスーツにダイヤモンドのネックレス。
スカートはひざ上10cm位のミニスカートに5cm位の黒のヒール。

多恵子は机から社章を取り出すと胸元につけた。


多恵子に見とれている僕に、
「篠原さん、資料見せてもらえますか。
それと、ここからの大森興産までの
電車と道路、打ち出して下さい。」


僕がパソコンで新たに打ち出している隣で、彼女が資料を読んでいる。
少し机にかがんでいるので多恵子の胸の谷間が僕の目に入ってきた。

多恵子は全ての資料を受け取ると
「サンキュー。」
と言いながら僕にウィンクした。


多恵子が支社のドアから出て行くとどよめきが起こった。
「かっこいい!」
と若い女性職員が黄色い声を出す。


支社長が僕の席に来て耳打ちする。
「流石だね。川村君もだけど、篠原君の情報データ処理も。」

そして
「はい、全員仕事に戻って!」
と大きな声で指示する。



しばらくすると僕の同期の池本が多恵子の席に座った。

「篠原君、知ってるかな?
川村ってスーツの下はガーターストッキングらしいよ。」
「――えっ。」
「その様子じゃ知らないよね。今日の川村、いい女だったなあ。」
僕らは顔を見合わせてうなずいた。

池本が席に戻った後も僕の頭と耳に「ガーターストッキング」の響きが
離れなくなってしまった・・・。


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