【束縛―ソ・ク・バ・ク―】
彼女は素早くお弁当を広げ、割り箸、ウェットティッシュなどを用意する。
おにぎりが7個とおかずが4品。その中に男心をくすぐる
里芋と人参とシメジの煮物が入っていた。
早速口に運ぶ。美味い。

「今冷凍食品で材料がカットしてあるものが打ってるんですよ。
だから味付けだけすればOKなんです。
私も一人暮らしだからよく利用しますよ。

何しろ煮物って煮とけばいいから、そばについてなくてもいいでしょ。
要は楽なんですよ。」

話から普段の料理の様子が伺える。
営業の多恵子と家庭の多恵子のギャップが想像を楽しませる。

「ロシアンおにぎり、作ってきたんです。
7個全部具が違います。
一つだけキムチの刻んだものが入ってるんですよ。
さぁ選んでください。」

一つ目は昆布だった。

セーフ!
おにぎりもおかずも美味しい。

二つ目に・・・ビンゴだった。
僕はお茶をがぶ飲みする。

彼女は僕の食べかけのおにぎりを手から取ると食べ始めた。

三つ目もビンゴだった・・!

「あっそうか。
明太子もだめですよね。」

何の抵抗もなく僕の食べかけのおにぎりを食べる彼女が可愛く
頼もしく感じた。

しかしあまりにも楽しそうに笑う彼女に

“お前、Sだろ。”

・・と思った。

またこのシチュエーションが結構楽しく笑える僕は
“M”かもしれない――。


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