Addicted to you
 東京に帰ってからは、迷惑にならないように注意しながらメールや電話をして、何度か夕食に誘われるようにもなった。

 嬉しかったことは、初めてのメールが瀬戸内さんからだったということだ。
 携帯の表示画面に瀬戸内さんの名前を見た時は、泣くほど嬉しくて、何度もメールを開いては読んだ。

 そっけない内容だけれど、瀬戸内さんはマメに返信してくれた。
 瀬戸内さんとの繋がりがあるということが、私にはとても大切なことだったのだ。

 さらに3ヶ月目を過ぎる頃には、瀬戸内さんの家に遊びに行ったり、私の手料理を食べてもらえるようにまでになった。

「果穂」
「はい?」

 キッチンにいる私を瀬戸内さんが私を呼ぶ。

 いつからか瀬戸内さんは私を果穂と呼ぶようになっていて、それが聞き慣れてきた頃だった。
 その日は、いつものように残業から帰宅した瀬戸内さんの為、夕食の支度をしてたのだ。

 私も就職していたが、まだ新人。
 残業するほどの仕事はまだ任されていない。
 だからどうしても瀬戸内さんの方が帰宅が遅くなる。

 疲れている瀬戸内さんの為に夕食を作ってあげたくて、私はこうして食事を作るのだ。

「ここの部屋のかぎを渡しておく。俺の仕事が終わるのを待ってないで、先に部屋にいてくれていい」

 私の手のひらに乗せられた銀の鍵。
 瀬戸内さんの部屋の合鍵だ。

「勝手に入っていいの?」
「ああ、その方が安心出来る」

 プライベートを大切にしている瀬戸内さんは、簡単に合鍵を渡したりする人じゃない。
 だからこそ、瀬戸内さんのテリトリーに入ることを許されたようで、すごく嬉しかった。

 普段、私は瀬戸内さんの仕事が終わるのを待って、一緒に部屋へ行く。
 それから夕食の支度をしているから、食べ終わって後片付けが終わる頃にはもう、最終電車の時間になっていることが多いい。

 それでも私は、少しでも多く瀬戸内さんと一緒にいる時間が欲しかった。
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