Addicted to you
 12月。
 和光銀行に入社し、三鷹支店に配属された私は、仕事にもだいぶ慣れた頃。

 営業補佐である私は、外回りしている営業マン達の補佐的な仕事を与えられる。
 必要となるような資料や書類の作成。
 営業マンが手の回らない所を補佐したり、たくさん勉強する事があって、私は海さんが遅くなる時は、なるべく会社で仕事をすることにしていた。

 その日も、新規大口顧客の獲得に走りまわる営業マンの為に資料を作成し、残業が終わって帰宅しようとした矢先のことだった。
 帰り支度をしている時に鳴った電話を取って、新宿の有名なホテルのオーナーを顧客に持つ営業マンがから、急に資料が必要になったから、ホテルに持ってきて欲しいと頼まれてしまったのだ。

 帰宅途中にホテルに寄って、受付に預けてくれればいいからと言われ、少し遠回りになるものの、快く引き受けてそのホテルへと向かった。

 届先のホテルは、新宿にある1流の高級ホテル。

 そのオーナーの自宅が三鷹にあり、その関係でウチの大口顧客となっているが、もちろん、営業マンの人柄もある。
 私は出来るだけ早く資料と、それに付随する他の資料をかき集め、封筒に入れてその封筒をホテルのオーナー室の受付の人に預けた。

 急いで来た私は、頼まれたことを無事に終わらせた安心感と、高級ホテルの珍しさもあって、ちょっとコーヒーでも飲んでいこうとホテルのロビー側にあるオープンカフェに入った。

 そこで私はコーヒーなんて飲まずにさっさと帰れば良かったのだ。
 この選択が私の運命を大きく変えた・・・・・・。

 ロビーの中庭には再来週に迫ったクリスマスの為に、ライトアップされた噴水と大きなもみの木のツリーがカフェからも楽しめる。

 構造的から中庭に面したガラス張りエレベーターからでもその景色が楽しめるようになっていた。
 私は色んな人がエレベーターから中庭を見て喜んでいる姿を、コーヒーの香りを楽しみながら見ていた。

 ふと何気なくロビーの方に視線をさ迷わせた私は、そこに海さんの姿を見つけたのだ。
 嬉しいサプライズに私は声をかけようと立ち上がりかけて硬直した。

 海さんがエレベーターの近くに立っていた外国人の女性に声をかけたのだ・・・・・・。
< 16 / 42 >

この作品をシェア

pagetop