Addicted to you
 いつもは、朝の出勤時間を余裕にもっていたのだけれど、今日はずいぶんと夢見が悪くて、目が覚めた時はいつもよりずっと遅い時間で、私は慌ててベッドから飛び起きてしまった。

 急いで支度を済ませ、カバンを掴む。
 新しく買ったパンプスに足を入れる。
 だいぶ慣れてきたヒールの高さが、社会人になった月日を感じさせた。

 横にかけてある鏡で、身だしなみチェック。

 少し跳ねた前髪をちょこっと直し、振り返って火の元の点検をすると、シューズラックの上にある充電器から携帯を外し、カバンの中に放り込んで、勢いよく扉を開けて外に出た。

 今日の天気は晴天。

 いつものごとく、外に出ているゴミ目当てのカラスの声が聞こえ、温かくなった風が桜の香りを運んでくる。

 やっと、外の季節に気付けるほど、気持ちが落ち着いてきている自分に気付き苦笑してしまう

 少し首をふって、思い出してしまいそうな辛い思い出を振り払い、私は扉にカギをかけ、カギをカバンの中にある小さなポケットに入れると、急ぎ足で駅へと歩き出した。

 満員電車に揺られ、都内へと向かう電車。
 木曜日ともなると、みんな結構疲れた顔している。
 その中で元気なのは学生ぐらいだろう。
 ま新しい制服から、新入生とわかる女の子たちが楽しそうに話しながらメールをしているのが、少し眩しく見えた。

 つい、2年前までは私も学生だった。
< 2 / 42 >

この作品をシェア

pagetop