Addicted to you
 海を好きだという気持ちは今でも変わりない。

 愛されなくても、あの人の傍にいたい・・・。
 けれど、他に気をとられるような人がいる人の側にはいられない。
 こんなに愛していても・・・。

 そんな、堂々巡りの考えになってしまう事に気付き、果穂は首を振った。

 生まれ持った性質(こころ)は変わらない。

 ノロノロと制服から私服に着替えて、果穂は自分のロッカーを閉める。

 海さんは私の勤め先を知った。
 会いに来るのだろうか?

 海が会社の前で待っているのではないかと思って、果穂はロッカー室から動けずにいた。
 捨ててしまった携帯番号のように、会社を捨てるわけにはいかない。

『いなければいないで落胆してしまうクセに・・・・』

 どこかで期待している自分がいて、そんな声がする。

 結局、果穂は裏口の非常階段から降りて、駅へと向かった。
 そうすれば、海が居ても会うことはないし、居なくてもそれを知ることがないのだから落胆する事もない。

 逃げている自分を意識しながらも、震える体を押さえつけ帰路へついた・・・・。






 あの日から帰りは、ずっと裏口から隠れるように帰宅している。

 海さんが会社の前で私を待ったことがあったのかは判らないままだ。

 でも判らない方が傷つくこともなく、悲しく思うこともない。
 今だに抱き続けている気持ちに、心が揺らぐ。

 そして、今日は司さんの誕生日パーティーの日。
 会場には、支店長と一緒に向かっていた。

 車内の中で私は始終無言で、何度も何か言いたそうな支店長の態度に気付いていながら、ずっと外を見て話し掛けられないようにしていた。

 話す内容が海さんのことじゃない事はわかっている。
 でも、今はただ辛くて愛想笑いなんて出来ないから、私に構わないでほしかったのだ。
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