Addicted to you
 就職難と言われているこの時期に、金融企業に就職出来たのは幸いと言えることだろう。

 両親は物心ついた時には亡くなっていて、私はずっと祖母と2人の生活だった。

 祖母の年金と両親の保険で食いつないでいたけれど、お金なんてものはいつまでもあるものじゃない。
 私が大学に入った頃にはだいぶ底をつき、私は勉強しながらバイトにあけくれる毎日だった。

 やっと就職の内定が決まり、安定した収入が見込めると喜んでいた矢先に祖母が亡くなり、私はたった1人残されてしまった。

 祖母も母も母子家庭に育った1人娘だった上に、父方の親族は随分前に縁を切ったきり交流はなく、私は親戚のことを何1つ知らなかった。

 そんな中で、とにかく毎日生きることに精一杯で、青春らしい思い出がなかった私に、友人が家の家業が忙しく人手不足な為に休み中、家に帰らなきゃならず、ついでに一緒について来ないかと誘ってくれたのだ。

 祖父を亡くした悲しさを紛らわせかったこともあって、私は行くことにした。

 旅行先はちょっとしたレジャー施設を集めたようなテーマーパーク島。
 島全体が大規模なテーマパークとなっていて、様々な複合施設があるというのが売りだ。

 宿泊先は、海外の観光客が喜びそうな、純和風の旅館。
 もちろん中は最新の設備になっており、見た目だけが和風で、人気の高い旅館だった。

 友人の両親がその旅館の経営者だったおかげで、格安で泊めてもらう事が出来たのだ。
 旅館の仕事を手伝うと申し出たけれど、遠慮され、私が島で暇を持て余すようになるまですぐだった。

 レジャー施設を利用する気もなかったので、新しい生活に備えてリフレッシュも兼ねて、1人でのんびりしようと思っていた。
 あの人に会うまでは・・・・。
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