Addicted to you
「もう、終わったことなんです。あの人は一緒に住んでいた間でも、私の事は何も聞きませんでした。私がどこに勤めているか、家族はいるのか、私のプロフィールの中で知っているのは名前と携帯の着信歴から知った私の携帯番号だけです。あの人は私に興味すらないんです・・・・」
「でも、貴女はそれが悲しいのでしょう?」

 そんな貴志さんの言葉に、私は黙って頷いた。

「それはね。貴女は悲しいのではなく、寂しいんですよ」
「寂しい・・・?」
「そう、寂しいんです」

 貴志さんから『寂しい』って言葉を聞いて何故か涙がこぼれた。

 私は寂しいと思っていたの?

「貴女は『寂しい』という感情を知っていても、『寂しい』という言葉を知らなかったんだね」

 優しく、大きな手が私の頭の上に乗せられる。
 ふんわりと、司さんと同じ香りがした。

「寂しいという気持ちを素直に受け入れてしまいなさい。そうすれば今度は寂しいのか、悲しいのか区別がつくようになる。そしてその寂しさをどうすればいいのか学びなさい・・・」

 この気持ちをどうすればいいのか学ぶ?
 それはどうにか出来るものなの?

 私は、ただ、涙を静かに流すだけだった・・・・・・。

< 34 / 42 >

この作品をシェア

pagetop