Addicted to you
 会場に戻って司さんの所に行くと、嬉しそうに迎えてくれた。
 確かに司さんは赤の他人の私を、本当の家族のように我侭も言ってくれたし、心配だってしてくれた。

 そして、その司さんから一線引いて下がっていたのは私の方・・・・・。

 それに気づく事が出来た。

 もっと司さんに心を開こう。
 きっと司さんなら、どんな私でもけして嫌いにはならないと思えるから・・・・。

 ふと、司さんの息子さん、貴志さんのお父様の貴雄さんが真っ赤なドレスのブロンドの女性と話しているのに気づいた。

 真っ赤なスーツに真っ赤な口紅とマニュキュア・・・・。
 そして、流れるブロンドの女性。

 海さんの傍にいた人。

 海さんの社長さんである女性を思い出して、まさかと思い直す。
 首を振ってもう1度見直してみて、それが間違いでない事を知った。

 海さんの上司で、新しくうちの支店の大手顧客となった女社長さんのシンシア・三木さんだった。

 そんなシンディさんと目が合ってしまい、私は急いでそらしたのだけど、シンディさんは気軽に私に手を振ってきた。
 それに気づいた貴雄さんと貴志さんと司さんの視線が私に集まる。

 私は黙って頭を下げるだけに留めておいた。

「お知り合いですか?」

 そう貴雄さんがシンディさんに聞いているのが聞こえる。

「ええ、新しく口座を開設した和光銀行さんの社員さんですわ。開設に行った日、彼女の入れた紅茶があまりにも美味しくって、ついおかわりなどして恥ずかしい真似をしてしまいましたの」
「そうでしょう。父が紅茶の入れ方を教えて、自分以外で紅茶は彼女にしか入れさせないほどなんですよ」

 貴雄さんがそう言って笑っていた。

 私はコーヒー党なので、そんなに褒められるほど紅茶を美味しく入れられるとは思えなかった。
 だから、こんなふうにストレートに褒められると、恥ずかしくって落ち着かなくなってしまう。

 少し俯いて落ちつかなげにしていると、「お話中、申し訳ありません」と声がして私の息が止まった。
 顔を上げなくても間違えるはずのない声。

 すぐそばに海さんがいる。

 どうしてこんな所でまで海さんと会ってしまうの!?

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