Addicted to you
『海さん、今日は何処かへでかけませんか?』
『ん・・・・・いいだろう、行き先はキミに任せる。
 あまり騒がしい所にはしないでくれよ』
『はい』

 ある日曜日の朝、久ぶりの連休で海さんを外に誘うと、いつものように少し考えてOKしてくれた。
 久しぶりのデートが嬉しくってはしゃぐ私。

『海さん!早く』
『待ちたまえ! 俺はアイススケートと言うものは初めてするんだ。まずリンクに足を・・・わっ!』
『か、海さん!』

 リンクに出たとたん、豪快にひっくり返ってしまった海さんに、慌ててそばにかけよってみると、心配ないとばかりに手が上げられる。

『大丈夫だ。・・・悪いが少し手を貸してくれないか、起き上がれん』

 大丈夫といったものの、うまく立ち上がる事が出来ない海さんは、私の手を貸して欲しいと頼んできた。

『クスクス、はいどうぞ』

 そんな様子が、なんだか可愛くって、つい笑ってしまう。

『コホン、・・・人間努力すればある程度こなせるようになるんだからな。スケートもすぐに滑れるようになってみせるさ。 さ、練習に付き合ってくれ』
『何もムキにならなくても・・・』

 笑っている私に、ムキになって少し顔を赤くしながらも、すぐに上手くなって見せるとばかりに意気込んでいた・・・・・。

 結局、言葉通り、すぐに私より上手くなってしまって、逆に私が滑ってしまった時に、ニヤっと笑って手を差し伸べてきたのだった。

 そうやって何にでも一生懸命で、すぐにこなしてしまうような器用な人だった。



 海さん・・・・・。
 思い出すと胸がすごく痛いの ――――――――。

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