Addicted to you
 島は様々な娯楽施設がある。
 遊園地から映画館、水族館までも。

 しかし、そのどれもが1人では利用しにくい。
 仕方ないので、私の暇の潰し方は、浜辺での散歩や、街を歩いてウィンドショッピングするだけだった。

 ここに誘ってくれた友人は家の手伝いが目的での帰省。
 一緒につき合わせることは出来ない。
 出来るだけ手伝いを申し出てはいるが、手伝わせる為に誘ったわけではないと言われ、たまに2人だけで出来る簡単な手伝いをしながら、その間に話しをするだけだ。
 それ以外は1人だった。

 ここへはのんびりと休息にきたようなものだったし、友人と遊ぶのは別の機会と決めている。
 それは自分も納得してのことなのだが、今まで時間があっても足りないという生活に慣れていると、ゆっくり出来る時間の有効な使い方がわからなくて、困っているという状況だった。






 島に来て3日目。
 その日も何を買うわけもなく、適当に街を歩いて店先を覗いていた。

 途中喉が渇き、適当な喫茶店を探してさ迷っているうちに歩道の突起物につまずいて、運悪くも持っていたポーチの中身が歩道に散らばる。

 慌てて散らばったものを拾っていると、横から私のサイフを差し出す手があった。

 仕立ての良さそうなスーツの袖に、指の長い大きな手。
 男性の手だとわかるのに、全然ゴツゴツしてなくて、綺麗な手をしているなって思いながら顔を上げてその相手を見た。

 スーツに合った色のネクタイ。
 ノリの効いた真っ白なシャツの順で目に入る。
 少し大きめのレンズの銀縁メガネが、切れ長の瞳を和らげていた。
 綺麗に後ろに撫で付けている髪。
 生真面目そうな整った顔立ちの男性だった。

 サラリーマンでエリートのイメージ。

 男性と目が合ったとたん、ドキリと心臓が大きく跳ね上がり、トクトクと心臓が早いリズムを刻む。
 その時、なんの理由もなく、私はこの人を探していたのだと思った。

 そんな経験は初めてのことだった。
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