Addicted to you
 私が目を覚まして下へ降りていくと、パーティーはすでにお開きになっていた。

 屋敷を少しウロウロしているうちに何とか司さんを見つけ、今日のことをお詫びしたのだけど、司さんは私の手をとると安心しなさいと手を軽く叩いた。

「貴志から話を聞いたよ。三木さんの娘さんのところの秘書さんなんだってね?」
「はい・・・・」
「私も彼のことを少し知っているが、誠実で真面目な人柄だと思っているよ」

 ガラス越しに見えるエレベーターの中で、海さんがシンディさんとスイートルームへと上がっていくシーンが思い出される。

 親密そうな2人の会話・・・・。
 どうして一緒に部屋に行く必要があったの?

 あんなシーンを見たら、普通思いつくことは1つだけじゃないの?

「でも・・・。でも何も判らないから、私にはどうすればいいのかさえ・・・」

 もちろん私だって海さんがあんな状態で、何かを言えるはなかったことは理解している。
 さっき会った時もそう。
 海さんは公私混同する性格じゃないから。

 そう言っても、頭と心は反するものの。
 頭でそう理解してても、感情は何も言ってもらえなかったと思ってしまう。

 そんな私に司さんの鋭い言葉が投げかけられる。

「何も判らないのなら、判るようになればいい。それとも、真実を知るのは怖いかな? もし、ちゃんと前を見て進んで行く気があるのなら、会って確かめてみてはどうかね? 真実はいつだって1つしかない。その真実をキチンと知って、それから動く事、それが正しい道への道しるべとなる」
「司さん・・・」

 聞きたい・・・・・。
 海さんの口からちゃんと聞いておきたい。

 海さんが何を思っていたのか・・・。

 海さんは私に会って、何を思ったの?
 私が海さんの前から消えた時は?

 そして、一番聞きたい事があるの・・・・・・・。

 私は一方的に自分の気持ちを押し付けてばかりで、海さんの気持ちを考えず傷つけてしまったの?

 だから、シンシアさんにその癒しを求めたの?

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