Addicted to you
 書類を渡しに行っている間はそんなに長くなくって、すぐに瀬戸内さんは戻ってきてくれた。

「さて、どこへ行くんだ? 俺は君に任せるよ」
「・・・・植物を見たりするのって嫌いじゃないですか?」
「植物? 自然を見るのは嫌いじゃないが・・・・、ああ、そう言えばこの近くに植物園があったな」
「はい」
「よし、そこへ行こう」

 植物園はエリアごとに建物が区切られていて、熱帯植物のエリアはとても蒸し熱くて、瀬戸内さんは涼しそうな顔をしているのに、上着を脱いでいたのが印象的だった。
 やっぱり熱いものは熱いのだろう。

 自分と同じように感じる瀬戸内さんに親近感がわく。

 瀬戸内さんは結構博学なのか、植物のことも詳しくて、見て回っている間も会話が尽きることはなかった。
 
 植物園を見た後は喉が乾いたこともあって、カフェテラスへ行った。
 テラスがある場所なのに店内を選んだのは、店内が空いていたことと、ゆっくり静かに休みたかったからだが、瀬戸内さんも店内の方が良かったようで、優しい表情を浮かべて同意してくれたことが、私の気持ちをさらに深くした。

「明日もお仕事ですか?」
「いや、明日は何もない。温水プールでスペースを予約しておいたから、そこでゆっくりしようかと思っている」
「温水プール?」

 島のパンフレットを思い出し、それらしいものの写真が浮かぶ。

「ウォーターランドですか?」
「ああ、そうだ」
「あの! お邪魔しないようにするので、私も一緒に行っていいですか?」
「君が?」
「はい」

 ウォーターランドは普通の温水プールじゃない。
 様々なプールと南国を思わせる内装で、プライベート空間がレンタル出来るのだ。

「プライベートルームにすごく興味があるんですけど、1人じゃ借りれないですし」
「・・・・・・読んでいなかった本を持ち込んでゆっくりと読みふけるつもりだから相手は出来ない。それでもいいのか?」
「もちろんです!」

 私の剣幕に根負けしたのか、瀬戸内さんは少し困ったように了承してくれた。

 別にかまってもらえなくてもかまわない。
 この時はただ、瀬戸内さんのそばにいることだけが重要と思えたのだ。
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