好きだからBLの恋
 恐いと噂の教授にも気軽に接するあの風人が恐れるほどの兄。
 優子は自分が女性だとわかってしまうのではないかとドキドキしていた。
 いくら奏多と似ていると言っても、お互い成人した大人だ。
 どうしたって骨格や身体の差は大きい。

 しかし、2人があまりにも雰囲気が似ていて、一緒にいると男女の差を感じさせなくなるのだ。
 それに他人から見た自分というものはあまり判らないものである。

 優子がドキドキする中、とうとう居間のドアが開く。

「ただいま」

 耳に心地よく響くテノール。
 ベージュのコートに中は紺のスーツを着ているスラリとした体格の風人の兄が居間に入ってきた。

 風人の兄だと言われれば確かに似てはいるが、美人と称されてもおかしくないほど兄の方がスッキリしたラインと、切れ長の涼しげな瞳。
 男でも少しドキっとしてしまうほど迫力のある美形だった。

「なんだ風人、客か?」
「あ、うん。大学の仲間」
「「おじゃましてまーす」」

 優子と奏多が揃って頭を下げる。
 そんな2人を見て風人の兄は優しい微笑みを浮かべる。

「いらっしゃい。もしかしてウチで勉強かな?」
「はい」

 あまり声を出せない優子にかわって、奏多が返事をする。

「この2人は双子で、優と奏多。奏多の方は前に家に来たことがあるんだけど覚えてねぇ?」
「ああ、たくさん食べてすごく誉めてもらえたって母さんが喜んでいたあの子だろ?」
「そうそう。で、こっちが奏多の兄の優」

 風人に紹介され、優子は出来るだけ低い声を出す。

「初めまして、大木 優です」
「初めまして、風人の兄、久音です」
「あ、兄貴、メシは食ってきたんだろ? 出来るだけ静かにするように気を付けるからゆっくり休んでよ」
「そうか、ありがとう」

 内心焦りまくっている風人は、出来るだけ平常通りにしようと勤めているが2人にもわかってしまうほどぎこちない態度だ。
 もちろん、兄弟である兄の久音がそれに気付かないはずがない。

「・・・風人、3人で勉強するんだよな?」
「は? なんで? 当たり前だろ」

 風人の様子を探るように真剣な表情になった久音は、そう確認をした。

 真剣な表情を浮かべると、久音は少し迫力が増す。
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