好きだからBLの恋
「なんだぁ~風人?」

 コールが鳴り、すぐに携帯の向こうで奏多の声がした。

「いきなり悪い。・・・今日って言うか、今夜、暇か?」
「おお、めちゃ暇!」

 何で暇なんだとしかりつけたい気持ちを抑え、最後の望みに託し、会話を続ける。

「優・・・は?」
「優? ・・・もしかして、今、家からか?」
「そうなんだ」

 いつもとは違う硬い声と、優子と呼ばなかったことに、奏多はすぐに気付いてくれたらしい。

 カンのいい奏多に風人は一類の光を見出した。
 それなのに、奏多はまったく判ってはくれなかったのだ。

「優も暇だ」

 なぜ察してくれているのに、そこで気付かないんだと腹が立って怒鳴りつけてやろうかと思ったがすぐに諦める。

 2人が固唾を飲んで風人を見守っているのだ。
 うかつなことは出来ない。

「母が、今夜食べに来ないかって・・・」
「行く!」

 即答だった。
 1秒も考えていないほど即答だ。

「優だって都合があるだろう。無理して来なくてもいいぞー」
「いや、ぜってーに行く! 無理にでも連れて行く!」

 棒読みでセリフを言う風人に対し、奏多は大きな声で断言した。
 これだけ大きな声で叫べば、辺りに筒抜けだろう。

 風人の望みは露と消えた瞬間だった・・・・・・。

 ブルーな風人の横で、母親が喜んでいる。
 久音はまた雑誌に視線を戻していた。

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