好きだからBLの恋
 夕方6時、久音が暇だからと2人を迎えに行くと言い出し、慌てた風人はつい騒いでしまった為に、母親の言いつけによって強制的にお留守番役となってしまった。

 優子の性別を隠している風人としては、2人が到着するまで落ち着かない。
 今度は何の打ち合わせもしていない状況で、しかも優子ともじかに話していない状態なのだ。

 風人が落ち着く無く待っていても仕方ないといえよう。

「失礼しまーす!」

 聞き覚えのある元気な声が玄関に響き、風人が転がり落ちてしまいそうな勢いで慌てて部屋から出てみれば、丁度奏多と優子が玄関をあがるところだった。
 その2人を見た風人は、一瞬心臓が止まってしまうのではないかと思うほど驚いた。

「ゆ、優!!」

 風人が動揺しつつも優と呼べたのは幸運だっただろう。
 玄関にいた優子は、奏多の服を着ていたものの、長い髪を隠す帽子をかぶっていなかったのだ。
 それもそのはず、肩より少し長かった髪はばっさりと短くなり、奏多と同じ髪型になっている。
 そのせいで、2人は前よりさらに一卵性の双子にしか見えなくなっていた。

 唖然としている風人に優子が気付いて、笑顔を浮かべる。

「風人。これ、みなさんで食べてくださいって」

 メガネをかけた男の子にしか見えない優子が折り菓子を差し出してきた。
 もちろん、反応の鈍いまま、風人が受け取る。

「ゆ・・・、お前・・・」
「今日美容院に行って来た時、奏多と同じ髪型にされちゃった。僕ってわかる?」
「あ、ああ」

 なぜ優子がいきなり髪を切ったのか、当然、風人にもわかった。

 風人が表情を曇らせる。
 申し訳なさを感じさせる風人に、優子は優しい微笑みを浮かべた。

「ウチのおっかん、帰ってきてそうそう、もう奏多と間違えたんだよ」
「そうなんだよなぁ~。この際、区別をつける為にも優は右分け、俺は左わけにするか?」
「そんなのおっかんが覚えるわけないじゃん」
「あー、まー確かに」

 普通に会話している2人に、風人はどう反応すればいいのかわからない。
 わかるのは、優子が自分の為に、わざわざ髪を切って来たということだけだ。

「気にしないで」

 すれ違いざま、優子は風人にだけ聞こえる小さな声でそう言って風人の肩を叩いた。

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