好きだからBLの恋
 優子が居間に入ると、一番最初に迎えたのは一朗だ。
 ずっと待っていたといわんばかりに、居間のドアを開ければ、すっ飛んでいきそうなほどしっぽを激しく振って、一朗が優子に飛びつく。

「わっ!」
「おっ、なんだ?」
「おっと!」

 いきなり一朗に飛びつかれ、よろめいた優子は体勢を崩し、後ろにいた奏多に倒れこみ、優子と奏多がその後ろにいた久音に倒れこむ。
 久音は成人している大人の体格をした2人をしっかり支えた。
 仕事でデスクワークが多くても、久音は時間を作ってはジムに通っているのだ。
 とっさでも、2人を支えるだけの力はあった。
 もちろん、優子は女性だし、奏多は男性としてはかなり華奢な方だったせいもあるのだが。

「2人とも大丈夫か?」
「はい」
「すいません」

 慌てて2人が体勢を立て直す。
 そんな優子の腕の中にはしっかりと一朗が収まっており、それに気付いた久音は何が起きたのか理解した。

「・・・一朗を部屋に入れてこよう」
「あ、でも、イチロー君、もういい子にしているみたいだし」

 自分に懐いてくれる一朗を優子が庇う。
 そんな優子に久音が何か言おうとしている時、3人のやりとりに、キッチンから母親の京子が顔を出した。

「あら、まっ!」
「あ、こんばんわっす!」
「おじゃまします」

 京子はぺこりと頭を下げる優子と奏多を見て、目を丸くする。

「あらやだ! 本当にそっくりなのね」

 驚いたように京子が2人を見比べる。

 京子が言うように、優子と奏多はそっくりではない。
 ただ、雰囲気が似すぎて、そんな錯覚を起させるのだ。

「あなたが優君?」
「・・・はい」
「今日はいきなりごめんなさいね。来てくださって嬉しいわ」
「いいえ、こちらこそ、誘ってくださってありがとうございます」

 礼儀正しい優子に、京子が微笑む。

「もう少しで料理が出来るわ。今日はたくさん召し上がってね」
「ありがとうございます」
「あっ、じゃ、じゃあ、出来るまで部屋にいてもいいだろ?」
「そうね。じゃあ出来上がったら呼ぶわ」
「奏多、優、部屋に行こうぜ」

 風人は2人を部屋に連れて行く口実ができて、これ幸いと自分の部屋に連れていった。

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