好きだからBLの恋
 卒業を間じかに控え、大木 優子は研究に没頭していた。
 大学では1人に1部屋、専用の実験室を与えてくれるのだが、優子は5人グループである研究している。

 研究結果は順調で、その経過レポートの提出が来週に迫っていたのだが、それぞれの分担が多すぎてなかなかレポートに取りかかることが出来ない。
 提出する為にレポートに取りかかるにはもう、ギリギリの期日が迫っていた。

「よし! 俺、何とかメドがついたけどそっちはどうだ?」

 研究のリーダー的な役割を受け持っている橘 風人は仲間達の方に振り返る。
 風人は気さくで明るく、社交的だ。
 しかもなかなか整った容姿をしており、大学ではかなり有名なのだが、研究が忙しいせいなのか今は彼女がいない。

「ダメ、私はもう少しかかりそう。宗一は?」

 トレッドヘアーにバンダナ、誰が見てもレゲエ好きだと分かるほどわかりやすい服装をしている鈴木 ほのかは、風人に向かって首を振り、隣にいた背のひょろっとしたべっ甲のメガネをかけている男に話し掛けた。
 話し掛けられた松田 宗一も首を振る。

「俺も明日一杯は無理そうだ」
「俺とゆーは終わっているぜ」

 優子と良く似た顔の青年が優子の肩に手を回す。
 大木 奏多は優子の双子の弟だ。
 優子と同じ大学に進み、同じ研究のグループのメンバーでもある。
 普通、兄弟が学校でも一緒だと嫌がるものだが、優子と奏多は気も合い、この年齢では珍しいほど仲が良い。

「じゃあ、俺と奏多と優子の3人で今日からレポにとりかかるか」

 風人が困ったような表情を浮かべる。
 グループは男性3人、女性2人で構成されているのだが、研究が終わっていないのでは2人を抜きにしてレポートを始めるしかない。
 期限はもうギリギリなのだ。
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