好きだからBLの恋
 確かに庭を見れば一部、ガーデニングしようとした努力の跡が見受けられる。
 
 庭でハーブなどを育てて自分の料理に使っているが、空いた時間で手早く植えた為、そこは雑多な状態で、その部分が庭のバランスを崩してしまっていた。
 そのことを気にして、何とかしようと手を入れたものの、所詮は素人、さらに悪くさせただけだった。

 どこかの業者に頼もうと思っていた母親は、その話を聞いてじかに優子に掛け合っている。

 それを聞いた風人はたまったものではない。
 これ以上久音と接触が増えて、優子が女性だとばれてしまっては意味がないのだ。

 風人は慌てて会話に割り込む。

「ゆ、優だって忙しいんだよ。な?」
「あら、私は優君に言っているのよ。風人には関係ないでしょう?」
「で、でもよー」
「業者に頼むよりいいんじゃないか? 何より、料理の味見もしてもらえる。一石二鳥じゃないか」
「まあ! そうね」

 久音の余計な一言に、母親は名案とばかりに嬉そうに手を叩いている。

 困惑げな優子と視線が合い、風人は大きく首を振った。
 しかし、もともと家族の中で風人の順位は低い。
 母親と久音が「イエス」と言えば、風人の「ノー」は聞かなかったことにされる。

 今回も結局、優子は2人の説得に断われなくなり、大学の研究の合間にお願いするということになった。

 押しに弱い優子と絶望的な表情の風人。
 そんな2人を面白がって風人の味方にならなかった奏多がこっそり笑っている。

「時給はいくらぐらいでいいかしら? 交通費と食事代は別途こちらで用意した方がいいわよね?」

 ウキウキと話を進める母親の言葉に、奏多が嬉々として口を挟む。

「おおっ、食事・・・。優、いつでも俺が手伝ってやるからな?」
「ありがとう。期待しないでいるよ」

 あきらかに食べのもに釣られて手伝いを申し出てきた奏多に、優子は呆れ顔だ。
 まあ、手伝いを申し出たいと思わせるほど、優子も今日の夕食は美味しかった。

「研究が忙しくなくても、無理に来なくてもいいわよ? あくまでも優君のペースでお願いね」
「はい」

 こっくりと頷く優子を見ながら、心の中で、風人が「大学の研究よ忙しくなれ!」と天に祈っていることは誰も知らない・・・・・・。

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