好きだからBLの恋
「ただいま」

 玄関で久音の声が聞こえ、風人が飛び上がる。

 時間を見れば、きっちり5時半だ。
 久音の仕事は5時に終わる。
 残業をしないで、寄り道もせずまっすぐ帰宅してきたのだ。

「ああ~俺、ストレスで円形脱毛症になりそう」

 風人が泣きそうな表情でクッションに沈む。
 そこへ久音が入って来た。

「やあ、いらっしゃい」

 すぐ居間に来て、久音は機嫌よさそうに笑顔で2人に挨拶をする。
 久音はこの間とは違う、ブラウンのダブルのスーツを来て、いかにも仕事が出来るサラリーマンという感じだ。

 実際、仕事中毒で、仕事も出来るのだが。

「「お邪魔してます」」

 礼儀正しく2人が挨拶を返すと、久音は頷いて着替えに自分の部屋へと引っ込んだ。




 しばらくして久音が下に降りてきた。
 優子の膝の上でくつろいでいた一朗のしっぱが揺れ、久音が入ってきた。

「優君、ちょっといいかしら?」

 キッチンから風人の母親に呼ばれ、優子は素直に立ち上がってキッチンへ向かう。
 それとは入れ違いに久音が優子が座っていた横に座った。

「ごめんなさい。今手が離せないから、このコーヒーを久音に持っていってくれないかしら?」
「はい」

 そんな会話が聞こえて、風人がカリカリする。

「なんだよ。そんなの俺に言えばいいのに、客にそんなことやらせんなよ」
「あら、風人、そこにいたの?」
「・・・それ、どういう意味?」

 もちろん、母親は風人が2人と一緒にいることは知っていた。
 それでもあえて優子を呼んだのだ。

 母親のただならぬ様子から、非常に想像したくない予想が生まれ、風人は不安になるのだった・・・・・・。

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