好きだからBLの恋
「よいしょっと!」

 2人分の簡単な着替えが入ったボストンバックを奏多が客間に置いた。
 橘家の客間は2階の一番奥にある。

「へ~結構広いじゃんか」
「普通だろ?」
「これだから金持ちの息子は・・・。いけないなぁ~もっと平民の感覚を学ばないと」
「アホか」

 冷たい風人の一言に奏多が肩をすくめて優子を見る。

「奏多。風人にあんまり意地悪しないの」

 諌める優子に、風人は振り向いて、優子の服装に視線を巡らせた。
 体型がまったくわからないだぼっとした服装だが、優子が着るとオシャレに見えていて全然だらしなくは見えない。
 それに今回は奏多も同じ服装だったので、一瞬どっちを見ているのかわからなくなるような錯覚が起きる。

 2人は意識的にお互いを似せようとしていることはわかった。
 それも風人の為にだ。

「優、今日は夕食を食べて、ただ泊まるだけなんだろ?」
「うん」
「あのさ・・・。こういったことを聞くのは失礼かもしれないけどよ。パジャマとかちゃんと気を使ったのを持ってきたんだよな?」
「うん、奏多とお揃いのジャージの上下だよ。僕が黒。奏多が白の色違い」
「へ、へぇ~。悪いな気を使わせちまって」
「ううん、もともと可愛いのとか着ないし」

 気づかってくれる優子に風人の気持ちが落ち着いてくる。

「ま、メシだけは上手いから、好きなだけ食べろよ」
「ゴッチ!」
「・・・奏多には言ってねぇよ! しかし・・・。最近似せるようにしているせいか、お前ら本当に似てきた感じしねぇ?」

 もういい加減ヒゲも濃くなる年齢だが、奏多のヒゲは生えていないんじゃないかと思うほど綺麗な肌だった。
 もし2人が両方とも女性だったと言われても風人は驚かないような気さえしてくる。
 そう言われた2人はお互いの顔を見合わせクスクスと笑う。

「一応、奏多に少しだけ化粧してるから」
「へ?」
「だって、いくらなんでも奏多は男だよ。2人とも似るようにするにはそれなりに、ね?」
「あ、・・・そ、そうなんだ」

 いつまでもクスクスと笑い合っている2人に、風人は何だか少し惑わされているような気さえ起きてきた・・・・・・・。

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