好きだからBLの恋
 優子の機転のおかげで3人は部屋に戻り、一応レポートに取り掛かった。
 その間、一朗は優子にべったりだ。

「何でコイツ、優子には懐くんだ? まあ、イチローは女性には懐かないから、そのおかげで優子が男だと思ってもらえるんだけど、それでもここまでベタ慣れなのも不思議だ」

 実際、久音が家にいるのにも関わらず、優子の後をついて回る一朗の姿には久音すらも驚いていた。

「昔、通行人にさえ必ず吼える犬がいたんだけどさ、俺は吼えられたっていうのに、優はそいつにすら吼えられたことがねぇの」
「犬使い?」

 風人の言葉に優子が笑う。

「何の役にも立たないじゃん」
「将来は警察犬を扱う仕事なんてどうだ?」
「あははっ!」

 3人で和やかに話しつつレポートを仕上げると、順番に風呂に入ることになった。
 入浴は優子、奏多、風人の順だ。

 この順番は何故か奏多が決めた。
 どうも、男の後はかわいそうだと言うことらしい。

 何だかんだと優子には優しい奏多の意見に異議はなく、優子が先にお風呂に入った。

 久音もすでに自分の部屋に引き上げており、部屋からは出てこない。
 風人の警戒も随分と緩みはじめていた。

「お風呂、頂きました。ありがとうございます」

 首にタオルを下げ、少しだぼついた黒のジャージ着替えた優子が、和式の方のリビングでくつろぐ京子と風人に礼をする。

 その髪はまだ少し濡れていた。

「おい、ちゃんと髪乾かせよ。風邪ひくぞ」
「あ、うん。大丈夫、いつもこれくらいだから」
「ね、奏多くんがお風呂から出たらケーキでも食べない? 男の子はすぐにお腹がすくでしょう? 美味しいケーキを買ってきたのよ」

 嬉しそうに提案する京子に、優子がふわりと微笑む。

「ありがとうございます」

 別にお腹はすいていないが、奏多は違うことを優子は知っている。
 奏多はどれだけ食べても一向に太らない。
 しかも、いつもお腹をすかしているのだ。

「ケーキなんてあったか?」
「さっき久音に買ってきてもらったのよ」
「兄貴が?」

 ケーキを買いにケーキ屋に行くとは思えなかった久音だ。
 しかし、久音がケーキを買いに行ったと聞いて、一瞬想像してしまい、風人は慌てて想像を打ち消す。

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