好きだからBLの恋
「優、そのイチゴくれ」
「嫌っ!」

 奏多は自分の分をぺろりと平らげてしまい、まだ食べている優子のケーキに乗ったイチゴを狙いだした。
 しかし、優子はイチゴをくれない。

「いいじゃん、くれよ」

 そう言ってフォークをイチゴに伸ばすと、当然優子が体を動かしてそれを避ける。

「おい、奏多やめろよ。大人げない」
「そうだよ。自分の分は食ったんだろ? もうお終い」
「だってよー」

 不満げな奏多に、優子は1つため息をつくと、イチゴをフォークに刺して奏多に差し出す。

「ほら」
「優ってばやっぱやっさしー」

 差し出されたイチゴをぱくりと食べて奏多は満足そうだ。
 その様子に優子は少し笑ってまたケーキを食べ始める。

 そんな和やかな雰囲気のはずだった。

 コーヒーのおかわりを取りに行った京子のところへ、食べ終えた自分の皿を下げようと立ち上がった優子に、奏多が自分の分のお皿を持って行ってもらおうと呼び止めようとして、優子のジャージのズボンに手をかけたのだ。

 そのせいでジャージのズボンがずるりと下がって優子の下着が見えた。
 しかも久音がいる前でだ。

「ぐふっ!」

 風人は変な声をあげて、今、自分の見ているものを信じられない気持ちで見ていた。

「おい! 引っ張るなよ」

 優子は何事もないかのように、空いている左手で奏多の頭をはたき、ずり落ちたズボンを元に戻した。
 硬直している風人と違って優子と奏多は普通だ。
 何も気づいていない。

「お、おお・・・おい!」
「「ん?」」

 突然立ち上がった風人に2人が不思議そうに視線が向けられる。

「れ、レポート! レポートで今思い出したことがあった。今すぐ上に行くぞ!」

 風人は、2人の腕を掴むと、そのまま強引に引っ張って行く。
 リビングには久音だけが残された。

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