好きだからBLの恋
「大丈夫、短パンだって思うようにしているから、だからあんまりそれには触れないで、意識しちゃうし」

 風人の為に恥を忍んで穿いたことは判ったが、トランクスを見た時の衝撃は生半可なものではない。
 ある意味、風人の常識が壊されたと言ってもいい。

「俺の為か・・・。悪かった」
「いいよ。あれほど風人が怯えるんだもん。お兄さんがよっぽど怖いんでしょう? だから気にしないで」
「でも・・・・」
「いいから。いいから。ただ、誰にもこんな恥かしいこと言わないでよ? 一応、これでも随分悩んだんだし。すごく勇気がいったんだからね」
「言うわけないだろ」
「この件はもういいじゃん。あんまり言うと優子はいたたまれないんだよ」
「・・・わかった」

 2人がかりの説得に、風人は何も言えなくなる。

 元凶は自分なのだ。
 風人が久音に怒られるのが嫌で、優子に男装させたのがすべての始まりだった。
 ここまでしてくれる2人に、風人はひたすら頭を下げることしかできない。

「でも、元は奏多が家で、私のズボンを掴んだりする事があるから、こんな保険をかけなきゃならなくなったんだからね! 反省して欲しいのは奏多の方だよ」
「だってよ~」
「もう、イチゴあげないから!」
「優子~」

 情けない声を出して優子にすがりつく奏多に、風人の気持ちが少しだけ軽くなるが、それでも優子に男性の下着をつけさせてしまったことだけは、風人の心に残る・・・・・・・・・。

 風人の心に負い目を残した一瞬だった。

 そんな些細で複雑な出来事が重なっていく。
 その中で変化していくのは風人だけではなく、優子もだった・・・・・・・・・。

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