好きだからBLの恋
 下着の一件があったお泊りの日を境に、優子に対し風人が優しくなった。
 そのことは周りも気づいていたが、優子だけは気づいていない。

 もともと優子はマイナス感情に敏感な分、プラス感情に鈍感なところがある。
 社交辞令も通用せず、言葉のまま受け入れるのだ。

 例えば、男性に社交辞令で『可愛いね』と言われたとする。
 大抵の人間なら社交辞令として受け取るか、そのまま受け止めるかだろう。
 しかし、優子は『誉めてもらった』という気持ちを素直に受け止めながら、『可愛い』という意味ではあまり信じていない。

 それは自分が可愛いと思っていないこともあるが、誉めてあげたい気持ちが言葉に変換した時、たまたま『可愛い』という言葉を使っただけだと解釈しているのだ。
 ある意味素直であり、ある意味ひねくれている性格と言っていいかもしれない。
 優子の恋愛面がなかなか育たないのはそのあたりが原因と言っていいだろう。

 風人の方と言えば、モテた為にそれなりに恋愛をしてきている。
 兄の久音が女性嫌いではあるが、一時的に預けられた先も普通の家庭だったこともあって、女性に対し偏見はない。

 風人の恋愛対象として絶対の条件は、尊敬出来る面がある芯の強い女性だ。
 料理家である母親の影響を風人はかなり受けている。

 自立心のある優子は、風人の女性の友達関係の中でも優子は特に仲が良い。

 しかし、あの日を境にして、あきらかに友人としては行き過ぎなほど優子に接するようになった風人に奏多の方が感情を乱し始め、3人の雰囲気が変わりだした。

< 45 / 48 >

この作品をシェア

pagetop