好きだからBLの恋
「優子、メシ行く?」
「あ、うん」

 授業が終わったとたん、横に座っていた風人が優子をランチを誘った。
 この授業は、研究メンバーが全員取っている教科だった。

 優子を真ん中に左が風人、右は奏多が座っている。

「辞書が入っていて重いだろ。その荷物、持ってやろうか?」

 そう言って、風人が優子の持っているカバンに向かって手を出すと、奏多がその腕を遮った。

「余計な事しなくていい。俺が持つからいいんだよ」

 あきらかに不機嫌そうな奏多は、あっという間に優子からカバンを取る。
 普段奏多は、こんなことはしたことがない。
 逆に、奏多が優子に自分の荷物を持ってと言う冗談を言うぐらいだ。

 そんな様子の奏多に優子が困惑した表情を浮かべた。

「ね、奏多。最近、どうしたの?」
「何が?」
「何だかイライラしているみたい」
「別に」

 誰が見ても不機嫌そうな奏多に、優子はちらりと風人を見る。
 マイナス感情に敏感な優子は、奏多と風人の間にある雰囲気をすぐに察していたが、その原因がわからないのだ。

 不機嫌そうな表情を隠そうともしない時の奏多は、何を問い詰めても無駄なことをわかっている優子も追求はしない。

「今日、また風人ン家に行くのか?」
「え? ・・・あ、ううん、今日は止めておく。ね、買い物したいんだけどついて来てくれる?」
「・・・しょうがねぇな」
「うん」

 口では嫌そうに言っているのに、表情は全然嫌そうなそぶりでもない。
 奏多は、優子の言葉に、ほんの少しだけ機嫌を和ませる。

 そんな奏多の様子に、風人は軽く頭をかく。

< 46 / 48 >

この作品をシェア

pagetop