コンビニの田中さん
ある日、僕は僕の彼女に田中さんのことを話したことがある。
一つ歳上で、十和子という名前だった。
僕は十和子さんのはっきりしたもの言いと、少し我儘なところが好きだった。
十和子さんは、僕のことを冴えないバンビくん、と呼んだ。
『バンビくんはね、疲れてると思うの』
十和子は真っ赤なマニキュアが塗られた長い自分の爪を見ながら言った。
『誰だってそんなときはあるわ。だから、それは全部幻で、本当はそんなオジイチャンは存在しないのよ』
そう言って十和子は僕にキスをして、僕をねだった。
『愛してるわ』
それから数ヵ月後、十和子は他に好きな男が出来たとあっさり言って、僕のもとから去っていった。
あいかわらず、田中さんは毎夜毎夜コンビニに現われ、成人雑誌を読んでいる。
田中さんはどうやら巨乳好きのようだ。