最カノ・アスカ様。










「ユッチ、遅いぞォアスカちゃん、寒くて死んじゃいそぉだしィ」

「わりぃ」


──この光景は、非常に目に優しくない。


可愛いと思ってんのか?


なんて思いながら、頬をフグみたいに膨らましたアスカを見ないようにして、適当に宥めるおれ。


「まっ、許してやる」


………………。


とりあえず、公園を出ることにしたおれら。


どのくらい待っていたのかはわからないが、アスカの機嫌はなぜか上々。


よぉし……。


おれは一番謎だったことを聞いてみることにした。


「……なぁ」

「んなぁに」

「……なんでさ、今日一緒に帰ろうと思ったんだ?」


『かなり面倒くせぇんだけど』と続けようとして、止めた。


コイツにキレられたら何されっか、わかったもんじゃねぇ。


咄嗟にそう判断したんだ。


危なかった……。

もっと慎重になれ、おれ。


アスカはおれの質問を「アハハ」と笑い飛ばすと、その裂けたような大きな口を開いた。


「だってェウチら、カレカノじゃぁんいつも、一緒にいたいのよンッ」

「え……じゃあもしかして……これからもずっと一緒に帰んの?毎日?」

「当たり前じゃぁん……もしかして、イヤなのォ」

「い、いや……んなことねぇ、よ」

「アハッ冗談だしィユッチは、ウチのこと大好きだもんねェ」


その自信は一体どこからくるんだ?


どうやらコイツの思考回路は、プラス思考の塊らしい。


羨ましいぜ……ある意味。


「あはは」


必死に顔の筋肉を吊り上げ笑っていると、アスカが舐めるような視線でおれを見上げてきた。


と言っても、その瞳は頬の肉に圧迫され細長く潰れていて、開いているのかもわかりづらい。


……なんなんだよ。

見るな……。

そんな(開いてんのかもわかんねぇような)目で、見るなよ……!


「……ねェユッチ今日、寒いね」
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