最カノ・アスカ様。
ゲーセンのど真ん中で繰り広げられる、獲物にがっつくライオンの群れのような光景。


周りは若干ひいている。


野生のサバンナを横目に、おれはこっそりと、学ランのポケットに手を忍ばせた。


昨日のゴツゴツした拳とは違う、フワッとした柔らかい布の感触。


自然と笑みが零れる。


それを掴み、引き上げると、淡いピンクの小さい巾着のような包みが姿を現した。


……今朝、アヤに貰ったものだ。



あの後、人気(ひとけ)のない薄暗い廊下まで移動した時──


『──あの、これ、1日早いけど……。明日、土曜日で渡せないから……』


おずおずと、アヤは丸く膨らんだ布を差し出した。


『チョコ……じゃないんだ。あの、昨日、ユウイチくんに聞いた後……買いに行ったんだけど。どこにも売ってなくて……。カップケーキなんだけど……』


申し訳なさそうに眉を下げるアヤに、なぜかドキッとした。


受け取った包みは、おれの掌でフワフワ揺れていて。


おれの心に宿ったものに、なんだか少し似ていた──……。



「……イチ……!ユ……チ……!……ユウイチ!!」

「…………ウワッ!?」
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