最カノ・アスカ様。
【ユッチに、渡したいものがあるのォだからァ、明日ユッチの家に持って行くねッ待っててねェ】


「…………は!?」


待て待て待て。


また勝手に決めやがってるとことか、おれに拒否権がないとことか、言いたいことは山ほどあるんだが……


お前、おれん家知らねぇだろーが!!


【PS.ユッチの家は、調べ済みだから、心配しないでね】


……怖えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!





──そして翌日、土曜日。


魔のバレンタインデーがやってきた……。



おれは朝からずっと自分の部屋に閉じこもり、布団に包まったままベッドの上でジッとしていた。


メールによると、アスカが来るのは3時頃。

今は……2時40分。


「もうすぐだ……」


怖い。

怖い。

怖い。


体中を取り巻く恐怖心を拭うため、おれは閉めきっていたカーテンに手をかけた。


シャッと射し込む光。

思わず目を細める。


……外は眩しいくらいの快晴だ。

少し、心が晴れた気がした。


「貰えるもん貰って、さっさと帰ってもらえばいっか……」


窓の外を眺めながら独り言を呟いていると──

窓の隅に、なにやら黒いものがちらついたのが見えた。
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