最カノ・アスカ様。
誰かが言った。

アヤはハァーと長く息を吐き、「緊張する」と苦笑いを浮かべる。


出番がまだまだ後のおれでさえ、今の時点で心臓が暴れまくってどうしようもない。


「頑張ろうぜ」

「うん、頑張ろう!」


アヤは「じゃあ行ってくる」と笑顔を残し、ステージへと歩いていった。

華奢で小さな背中は、凛としていて。

思わずドキッとした。


「……こんなんで大丈夫か?キスシーン……」


……誰も知らなかった。

これが、あの悲惨で恐ろしい、悲劇の幕開けだったことを──





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