最カノ・アスカ様。
劇は順調に進んでいき、もうじきクライマックスを迎えようとしていた。

あっという間におれの出番が……。


「王子、頑張れよっ」

「………………おう」

「反応遅!大丈夫かよー?」


薄暗い舞台裏の中、ヒロがいつもの調子でおちゃらけてくる。

こいつなりに励まそうとしてくれているんだろう。


「噛まねぇように頑張るわ……」

「おう!客席はジャガイモ畑だぞ、ジャガイモ!」

「ジャガイモ、ジャガイモ、ジャガイモ……」


ヒロに洗脳を施されていた、その時。


舞台裏が暗闇に包まれた。

ステージも真っ暗。


「な、なんだ!?」

「何が起こったの!?」

「何も見えないよーっ」


クラスの皆が騒ぎ出す。


「落ち着けみんな!多分ブレーカーが落ちただけだから!」


暗闇の中、ヒロが叫んだ。


幸い今は王子が現れるラストシーンに向けての準備中で、ステージの幕はシャットアウトされている。

劇自体に支障は出ていない。
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