最カノ・アスカ様。
叫んだ。

叫ばずにはいられなかった。


なぜなら箱の中で眠っていたのがアスカだったから……。


「ユッチ」


メルヘンがホラーに変わる。


ピンクに純白のレースをあしらったドレス姿で、綺麗な花々に囲まれたアスカ。

気持ち悪い……。


「な、な、なんでお前が……」


おれはハッとした。


ここはステージの上。

まずい、すっかり忘れてた。


客席に目をやると、みんなポカーンとしていた。

当然である。


舞台裏は……恐くて見れなかった。

が、クラスメイト達の視線を痛いほど感じる。


おれは発狂しながら逃げ出したい衝動を抑え、深呼吸をしてから、再び箱に視線を下ろした。


「な……なんと美しい姫ダ!あまりの美しさに叫んでしまったぜ!!」


我ながら、なんとも苦しいアドリブ。


「アハッユッチってば、めっちゃ、照れるしぃ」


おい、喋んな。

いいか勘違いすんなよこれはクラスのみんなのためであって決してお前に言った言葉じゃねぇんだからな……ブツブツ。


……てか。
アヤはいずこ?
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