最カノ・アスカ様。
目は絶対に閉じない。

そりゃ出来れば閉じたいというのが本音だが、もし誤って唇が触れたりしたらショック死しかねない。


一回のまばたきも許されないおれの目は、恐怖と不安で血走っているに違いない。

まぁ客席からはおれの顔は見えてないから問題ない。


ゆっくり、ゆっくりと……アスカの唇が迫ってくる。

正確に言えばおれが迫ってるんだけど。


──よし!ここだ!


おれはピタッと動きを止めた。

ついでに息も。


『ヒュー』やら『うぉー』やら客席から冷やかす声が聞こえたが、おれはそんなこと微塵も気にせず、己の極限と闘っていた。


……よ、よし……。
もういいだろう。


そう思って離れようとした瞬間。


「わ!?」


何かがおれの首に巻き付き、それが何だか理解する前に──












ブチュッ。
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