Time Lag

外に出ると春の風が僕たちを優しく包んだ。

日差しの中で野良猫を抱いている彼女が輝いてみえる。

もし今、僕の気持ちを伝えたら彼女はどんな顔をするんだろうか。

それが怖くて、僕はずっと彼女への気持ちを胸の中に閉じこめていた。

彼女と友達でいられなくなるのが怖かった。

だけどこの気持ちを伝えないまま、彼女と友達でいるのも正直苦しかった。

春の風が僕の背中を押すように強く吹く。

僕は決意して、彼女の肩を叩こうとした。


「千秋―――」


その時だった。

彼女が突然振り向き、僕はとっさに手を引っ込めた。


「あなたの友達?」


メモ帳に書かれた質問に僕は顔を上げる。

彼女は遠くを指差していて、僕はその方向に目をやった。

校舎の窓から誰かが僕らに向けて手を大きく振っているのが見えた。

ショートボブの女の子。

いつからそうしていたのかその子は僕の名前を大きな声で呼んでいた。

僕は周りの視線に恥ずかしさを覚えながら、手を小さく振り返した。
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