Time Lag
「あなたの友達?」
と書かれたメモ帳を彼女がもう一度僕に差し出した。
僕は小さく頷いて、シャープペンシルを走らせた。
「家が近所の幼なじみ。愛美っていうんだ」
「可愛い女の子だね」
「そうかな。実際に話してみれば分かると思うけど愛美は男っぽいよ。
近所だからよく僕の家に遊びに来るんだけどいつも部屋を散らかして帰るんだ。
ガサツというか全然女らしくないというか」
「仲が良いんだ」
「兄妹みたいなものかな」
ふと視線を感じてメモ帳から目を離すと、彼女が僕をじっと見つめていた。
いつもと違う様子に僕はどうしたの、と小首を傾げた。
彼女はううん、といってまたシャープペンシルを走らせる。
「今日はバイトがあるから帰るね。また明日」
そうして彼女はそそくさと足早に帰っていってしまった。