Time Lag

「そうだけど。どうして分かった？」

「筆談でやりとりしているのが見えたから」

「ああ、そっか」


僕はメモ帳を手に持っていたことを思い出した。

毎日使っているからか所々が薄汚れている。


「そのメモ帳、どんなことが書いてあるの？」

「別に。たわいもないこと――って勝手に見るなよっ」


愛美が僕の後ろからメモ帳を覗いていた。

僕は慌ててそれを覆い隠す。


「へえ」


なにやら愛美が怪しげに笑い出し、僕はぎょっとした。


「なんだよ」

「使い終わっても大事にしなさいよ。アルバムと一緒でそのメモ帳も思い出のひとつなんだから」

「言われなくてもそのつもりだよ」


僕が少しむきになって答えると愛美はまだ意味深に笑みを浮かべたままだった。

それから愛美は去り間際に僕に気がかりな言葉を残した。


「彼女の気持ちが知りたいならそのメモ帳をもう一回読み返してみるといいよ。きっと分かるから」