Time Lag
――このメモ帳を読み返すと彼女の気持ちが分かる?
僕は家に帰ってからも愛美の言葉が脳裏に焼きついて離れなかった。
愛美の言ったことが本当なら、僕はひとまずメモ帳に目を通すことにした。
そこには僕と彼女の思い出がたくさん詰まっている。
気が付けばいつの間にか夜は明けていた。
カーテンを開けると朝日が目にしみる。
結局、何回も読み返したがなにも見つからなかった。
「愛美のやつ。適当なこと言って」
窓を開けてキッチンに向かい、眠気覚ましにコーヒーを入れる。
そしてもう一度メモ帳を手にとった。
ぱらぱらと捲りながら、僕は昨日彼女が足早に帰る後ろ姿を思い出していた。
やっぱり僕の気持ちは彼女に伝えるべきじゃないのだろうか。
ふいに窓の外から風が吹いた。
それはあの時吹いた春の風のように優しく。
最後のページまであとわずかというところだった。
僕は目を疑って手を止めた。
そこには見たことのない彼女の言葉があったから。
彼女の可愛らしい字で、その言葉は端の隅で小さく書かれていた。