あなたの笑顔
 しかし待ち合わせの店に行ってみると
奥の方で佐々木さんが落ち着かない様子で
ひとり座っていた。

 「お待たせしました。
 あら、みんなは?」

 「連絡しなかったから来ないよ。 
 君と二人の方がいいから。」
と少し早口で言う。

佐々木さんの顔を不思議な気持ちで見たが、
すぐにビールとベトナム料理が運ばれてきた。

 「勝手に注文したから。」
と料理の話が始まった。
出張で何度か行ったベトナムでの話を
織り交ぜながら続いた。

 少しほろ酔い気分になって彼から、
 「久しぶりに君に会って
 なんだか以前と変わったから気になっていてね。
 以前はよくコロコロ笑っただろ。」

 「今だって笑うでしょ。」
 「いや。眼が笑ってない。
 何か悩んでいる眼だよ。
 だから昔みたいに笑わせたくなってね。
 それで誘ったんだ。」

少し酔っているとはいえ
まっすぐに見られると吸い込まれそうな気分だった。
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