恋愛テスト
けじめ
昨日、クラスで一番可愛いと誰もが認める、有里にキスをされた。
しかもその意味が理解出来ない。
理由も分からん。
それを考えているうちに気がつけば夜が明けてしまっており、つまりは見事なまでに一睡も出来なかったわけだ。
……俺が一体何をした。
もういっそ俺は怒っていいんじゃないのか?
切れちまったっていいんじゃないのか?
そう思っても手出しし難いのは、有里がある意味、非常に厄介なやつだからだ。
有里は交友関係の幅が広く、妙な時、変なところでコネクションを発揮する。
たとえば校長と茶飲み友達だったり、近所の寺の坊さんと囲碁を打っていたりするようなやつだったりするので、うかつに手出ししたらどんな目に遭うか分からん。
噂では、警察だのヤの付く職業だのにも顔が利くと言われている。
流石にそれはオーバーな表現だろうと思うのだが、侮れない。
しかし、だからといって放っておくのも、今後の睡眠のことを考えるとよくなさそうだ。
よって、俺は仕返しのように、放課後の教室へ有里を呼び出した。
昨日と同じく、二人きりの教室で対面した有里は、昨日のことなど何も意識していないようだった。
更に言うなら、今日一日、ずっとそんな感じだった。
つまり、有里にとってあんなことはどうでもいいようなことなんだろうか。
首を捻りながら、俺は有里を迎えた。
「来てくれたか」
「そりゃあ来るよ。
せっかくの呼び出しだし、昨日は私が呼び出したんだからね」
そう言って有里は薄く笑った。
どこか残忍にも見える笑い方が、どうしてか、猫に似て見えた。
近所に住んでる、懐かないうえ、少しばかり意地の悪い、猫そっくりだ。