恋愛テスト

「単刀直入に聞こう」

これ以上にらみ合ったって仕方ないと思い、俺は話を切り出した。

「昨日のあれは、なんだったんだ?
 せめて理由を聞かせろ」

「あれ?
 ……ああ、キスのこと?」

ふふっと忍び笑いを漏らした有里は、やっぱり可愛かった。

だが、それだけにタチが悪いということも今の俺は痛感済みである。

「有里、」

咎めるように呼べば、

「分かってるよ」

有里は笑みを引っ込めた。

「昨日も言っただろ?
 キスってどんな味なのか、確かめたかっただけ」

「それだけか?」

「うん、それだけ」

「じゃあ、俺を好きだとかそういうわけじゃないんだな?」

「そうだなぁ…」

と考え込む素振りを見せた有里は、にこにこと目を細めたまま、

「君のことは面白いと思ってるよ。
 興味深いとも、ね。
 でも、恋愛感情で好きかって言われたら、微妙なところだな」

まあ、そんなもんだろうな。

その程度にしか評価してないくせに、なんで俺なんかとキスしてみようと思ったのかが分からんが。

「それで、仮に私が君を好きだとしたらどうなるの?」

くすくすと楽しげに笑いながら聞いてきた有里に、俺は答える。

「お前からとはいえ、キスしちまったんだから、けじめとして付き合うべきだろ」

大真面目に言ったってのに、有里は特上の冗談でも耳にしたかのように、声を立てて笑った。

そうして口にした感想は、

「お固いね」

というものだった。

「ほっといてくれ。
 自分でもよく分かってる」

「あはは、でも、悪くないよ」

そう笑っておいて、有里はきゅっと目を細めた。

目の細さでは笑顔と大して違わないはずだってのに、その目はさっきまでよりずっと冷ややかだった。

ただ観察しているだけのような、目。

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