恋人未満

無理矢理布団から引き摺り出した新を洗面所まで連行する。

いっそ頭から水に沈めてやりたいけど、そこは流石にやめておいて、濡らしたタオルで顔をぐいぐい拭いてやった。

「全くもう、顔くらい自分で洗ってよ」

ヒゲをそらせるのはもう諦めた。

あたしじゃうまく出来ないし、新にやらせるのなんて無理だから。

おかげで、もともとそう濃い方でもないくせに、新はヒゲでもっさりした外見だ。

勿体無い気もするけど、自業自得という思いの方が強い。

それからやっと食卓について、朝ごはんを食べ始める。

「いただきます」

って手を合わせさせるのも忘れずに。

やっぱり冷めてしまった朝ごはんは少し残念だけど、仕方ない。

これがいつもの味といえばいつもの味なんだし。

食べながらも、あたしの頭はやらなきゃいけないことでいっぱいだ。

部屋の掃除とか、洗濯物干しとか、アイロンかけとかね。


…あー……所帯染みてる。

これでも女子高生だってのに、泣きたくなるくらい情けない思考だわ。

それもこれも全部こいつが悪い!

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