恋人未満
食べ終わったら食べ終わったで、新はソファにごろんと横になった。
片付けなんて手伝うはずもない。
お腹がいっぱいになったから寝る、っていうのは新の中では決まりごとみたいになってるらしい。
完全に動物みたいだ。
もう呆れたり、怒鳴ったりすることさえしないで、あたしはひとりで片付ける。
洗い物が終る頃には、新はすやすや寝息を立て始めていて、あたしはそっと、気付かれないようにその寝顔に見入るのだ。
本当に幸せそうな、見てるこっちまで暖かい気持ちになって、ついでに眠たくなっちゃうような寝顔。
そんな寝顔が可愛くて、あたしまで幸せな気持ちになってしまうから、世話なんて焼いちゃうんだな。
苦笑したあたしは、そっと新の髪を撫でた。
くしゃくしゃにもつれた髪は、お世辞にも手触りがいいなんて言えない。
でも、あたしにとっては違う。
触ってるだけで幸せになれる気がする。
「…大好き」
絶対に聞こえてないと分かってる時にしか言わないでおくのは、これ以上こいつを調子付かせたくないから。
聞こえてないと分かってるのに言ってしまうのは、あたしがそう言いたいからだ。
口にした言葉ひとつだけで、胸の中が暖かくなる。
「よしっ」
自分に気合を入れなおして、あたしは大きく伸びをする。
「まずは洗濯からがんばろっ!」