恋人未満
「そういや、夏野くんは?」
「さあ?
どっかで昼寝してんじゃない?
朝は一応連れてきたから」
叩き起こして、着替えさせて、朝飯口に突っ込んでって本当に大変だった。
おまけに、自分より20センチ近く背が高い奴を引き摺って行くなんて、本当に楽じゃないんだから。
これが毎日続くと思うと更に嫌になる。
「ほんと、貴音はえらいねー。
あたしが男だったら、貴音をお嫁さんにもらいたいよ」
「今ならオプションであのばかが付いて来ます、って?」
「う…あー……夏野くんがオプションかぁ。
手強そうだなぁ」
と秋乃は力なく笑った。
…何がどう手強いんだか。
「夏野くんも、ちゃんとひげとかそって、髪を整えたらかっこいいのにね」
「それは普段があまりに酷いからそう思うだけだって。
ギャップのせい」
「手厳しいね、貴音は」
でも実際、と秋乃は悪戯っぽく笑って、
「夏野くん、人気はあるんだよ?」
「へー」
上辺に騙される人間って多いのね。