風になったアナタへ
次の店は、シャーマーズという飲み屋で、そこはリコーズよりも空いていた。音楽もそれほどうるさくなかった。リコーズと違うのは、シャーマーズには踊れるスペースがあることだ。

リンは踊りが上手で、彼女が踊っているのを見ていると飽きない。フロアでリンが踊りだすと、周囲の目がリンに注がれたまま動かなくなる。それを遠くから眺めるのが私は好きだった。

もちろん踊るつもりなどさらさら無い私は、ボックス席の奥の方に席を取った。その席に荷物をおいて、私はダンスフロアを突っ切ってトイレに行った。トイレから出てドアを開けると、ドアの外でリンは、立っているのもやっとという体勢で笑い転げながら言った。

「ジョーが、ジョーが……変な踊りを……」
< 14 / 81 >

この作品をシェア

pagetop