風になったアナタへ
リンの言った事を冗談だと思った私は、笑いながら彼女の顔を覗き込んだ。

「私ね、道端に捨てられていたの。だから誕生日は無いの」

歯並びの良い白い歯を見せ、無理なく笑う彼女の目を見た時、彼女が冗談を言っているのではないと分かった。しかし、私は気の利いた言葉が見つけられなかった。

「……」

「そんなに深刻な顔しないでよ。今日は、あなたの誕生日でしょっ。ねえ、近いうち都合の良い日ある? 誕生祝いに、あなたを食事に連れていきたいって、ママに頼んであるの。私を育ててくれた素敵な人よ。きっと、あなたも私のママを好きになるわ」

とリンは、平和な瞳で私を見つめるのだった。
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