風になったアナタへ
様々な思いが交錯した。嬉しいのか悲しいのか切ないのか、それとも感動なのか同情なのか、私自身、全く分からなかった。ただ気づいた時には、私はリンの首に抱きついていた。しかし、おそらく彼女には、交錯した私の気持ちの中の嬉しさしか伝わっていなかったと今なら言える。なぜなら、彼女は、素敵な家族に囲まれて育った自分を誇りにこそすれ、自分の生い立ちを恥じてなんかいなかったから。強がりなどでは無く、それがリンの本当の気持ちだったから。

そのことを、私は彼女を深く知るにつれて、少しずつ知ることになる。

*リンの誕生について
リンは、1973年に韓国で生まれた。どのようないきさつで、彼女が孤児院に引き取られたかは、定かではない。
 
彼女が韓国の孤児院で3才になった頃、アメリカ・ワシントン州の田舎町に住む、とある医者の家族は、アジアの女の子を養女にするという計画をたてていた。その医者の妻が、後のリンの母親となるパトリシアである。
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