風になったアナタへ
1976年6月4日(リン3歳の時)

~リンがラーソン家へ来た日~

この日は、兄の一人であるネイソンの誕生日でもあった。妹を得るという驚きと喜びに満ちた誕生日を、彼は決して忘れないだろう。

絵に描いたような幸せな白人家庭に仲間入りをした、小さな小さなアジアの女の子リンは、その家族にとって大きな大きな存在となっていく。
 
英語が全く話せないリンに、母であるパトリシアは、牛の絵が描いてある絵本を見せながら、

「モーゥッ」

と鳴いて聞かせ、目を丸くするリンに、

「Cow」

と教えることから始めたという。

しかし、新しい環境に適応する子供の能力というものは、大人の想像をはるかに超えるものだった。暇さえあれば二人の兄と遊ぶようになったリンは、これといって誰が教えるでもなく言葉を覚え、あっという間にポテトが好きになり、バブルガムが好きになり、そしてアップルパイが好きな典型的なアメリカンガールになっていった。
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